政府税制調査会(首相の諮問機関)の総会が9日、首相官邸で開かれ、2017年度の税制改正議論がスタートした。配偶者控除の見直しやビール類の税額一本化、国際的な課税逃れ対策の強化などが主要テーマとなる。ただ、配偶者控除の見直しを巡っては、増税となる世帯の反発も予想され、年末の税制改正の策定に向けて、どこまで理解を得ることができるかが課題になりそうだ。【横山三加子】


 「女性が就業調整を意識せずに働くことができるようにするなど、多様な働き方に中立的な仕組みをつくる必要がある」。安倍晋三首相は、9日の政府税調の総会で配偶者控除の見直しに意欲を示した。


 配偶者控除は、年収103万円以下の配偶者がいる世帯を対象に、世帯主の所得から38万円を控除する制度。パートの妻などが対象から外れて納税額が増えないように、年収103万円を超えない範囲に勤務を抑えるケースも多く、「女性の社会進出を妨げている」との指摘がある。政府・与党は、安倍政権が掲げる「働き方改革」と歩調を合わせて見直しを進める方針だ。


 今後の議論では、配偶者控除に代わって、夫婦であれば収入や働き方に関わらず一定の控除が受けられる「夫婦控除」の導入案が軸になる見込み。だが、控除額が38万円を下回れば、配偶者控除を受けていた世帯は増税となり、反発が予想される。低所得層への配慮も課題となりそうだ。


 政府税調の中里実会長(東大院法学政治学研究科教授)は総会終了後の記者会見で、「国民の皆さんの考えに細かく耳を傾けながら具体的なことを考えていく」と、慎重に制度のあり方を検討する姿勢を示した。


 今回の税制改正議論では、酒税の見直しも焦点となる。政府・与党は、麦芽の比率や製法によって異なるビール、発泡酒、第3のビールの税額を、350ミリリットル入りで55円程度に一本化する方向で検討する。税額が高いビールが減税となる一方で、発泡酒などは増税となる。


 また、「パナマ文書」で関心が高まった国際的な課税逃れ対策の強化も議題となる。